奥の間の先には小さい中庭がある。通り土間はここでは屋根だけになり、中庭に開放されていて、反対側の壁側に流しがあって井戸があり、「くど」と呼ぶかまどがあって薪が積まれていたりする。ここが台所だ。中庭のさらに奥には風呂場や便所がある。汲み取り便所だから下水配管の無い頃には、天秤棒の前後に肥桶を下げて、便所に溜まった汚物を汲み取る作業のため、通り土間は絶対必要な空間であった。では、食事はどこでしたか。中の間であった。中の間に面した通り土間の反対側の壁には大きな戸棚がしつらえてあり、膳棚と呼ばれていた。中には家族人数分の箱膳が入っていて、箱膳の中にその人の使う茶碗や木の椀、箸、取り皿などが入れてあり、食事の時は箱膳ごと中の間に持ち出し、所定の位置に座って箱膳の蓋を裏返して載せ、その人分の食卓にした。使った食器類は自分で流しに運び、洗ってまた箱膳に入れて膳棚に片付けた。子供の頃からやらされていて、これが子供の躾にもなっていた。中の間は真ん中の部屋だから暗かったか。実はそうではない。中の間に面した通り土間の上は二階の屋根の裏側まで見える吹き抜けになっていて、上の方の壁に高窓があったり、屋根に天窓が付いていたりしたのですこぶる明るかった。中庭の先に更に別棟の部屋のある家もあって、離れなので隠居さんの部屋になったりしていた。こんな場合、風呂場や便所は更に奥になるが、こうした水廻りのあたりに残る空地が物干し場になったり物置が置かれたりした。