平成五年の五月にヨーロッパで発売した四WD車にしても、ヨーロッパの日産で開発して、スペインの子会社工場(モトールイベリカ、本社バルセロナ)でつくるのですが、これまたどこから漏れたのか、今度は「完成車で売らせてくれ」といってきた。この商売はすでに成立しています。こういう形態を、クルマでもエンジンとかのコンポーネントでも、もちろん部品でもやりたいのですよ。それによってフルライン体制を整えるのです。それから、われわれはプラットホームと呼んでいるですが、エンジン、アクセル、トランスミッションを含めたフロアから下の部分はまったく同じで、上屋だけを違えてまったく別のクルマとして売っているもの、トヨタさんの代表例でいえば『マーク?』『クレスタ』『チェイサー』、当社の『サニー』『パルサー』ですね。一車種当たりの台数でいわれると少なく計算ではでてきますが、『サニー』と『パルサー』は大部分の部品とかコンポーネントは共通だからこれはもう両車種合わせて四万〜五万台の規模と勘定してもらわないと困る。そうした双子車、三つ子車の系列販売で他社と対抗していく方向があるのではないかと思っています。T氏とのインタビューは、臭い物にはフタをしろ式の官僚的な体質が大嫌いだった、日産に対する私の長年のイメージを根底からゆさぶるインパクトを与えた。私のイヤ味な質問一つひとつに誠実に答える姿勢でいて、偉ぶらず穏やかな口調の中にも、「オレでなくて日産の再生を誰がやるんだ」という強い自信を感じさせた。そして何よりも、技術屋出身であるにもかかわらず、「ユーザーとの間でぬくもりのある販売システムを再構築することが日産再生のカギです」といい切った見識。「歴代の日産の経営者とは全く違う、非常に求心力のある人物だ」と感じさせるに十分だった。
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