お受験ママの将来

2011.05.16

子どもではなく、お受験ママの将来のほうが私には気がかりだった。会って話を聞いた四十人のお母さんたちは、全員が優秀だった。これまでに取材は数多くこなしてきたが、会う人全員がこちらの意図するところを的確に汲んで、しっかりと答えてくれたのは今回のお受験の取材がはじめてである。インタビュー・テープを聞き返すと、いかに彼女たちがよどみのない口調で明快にしゃべっていたかにあらためて感心する。優れた能力を持つ、かしこい女性たちなのである。彼女たちの約半数は、「お受験が終わったら働きたい」と希望していた。「もう子どものことはいいわ。つぎは自分のことをしたい」としみじみ言う。だが彼女たちの意欲と能力の受け皿となる場は、現在の日本にはあまりにも乏しい。まじめな人たちだから、家庭にも育児にも一生懸命なのだ。全力を子どもの受験に注ぎ込めるなんて、よほど努力家でまじめでなくてはできない話である。だが、結婚・出産から十年近くあいた仕事のブランクを埋めるのは容易ではない。もちろん彼女たちは経済的に恵まれているから、ムリして働く必要もないし、また夫や子どもも彼女たちが家庭を犠牲にして仕事のために外に出ることを喜ばないだろう。お受験に向けていたエネルギーを別の方向に向けたいと思っても、特殊な技能がないかぎりむずかしいのが現状である。別に働くことだけが選択肢ではない、趣味でもボランティアでもお受験並みにがんばればいいじゃないか、と言う人もいるだろう。だが彼女たちは働く楽しさもつらさも知っている世代である。自分の能力を生かしたいと願っている。子どもにのめりこんではいけないと自制もしている。
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